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一万円選書に当選して、あわてて「へろへろ」を読んだ話

こんにちは、SLEナースumiです。

「やりたいことができない」

看護師になって1、2年めの頃、病棟ではたらいていたわたしは、山のような業務をこなしながらそう思っていました。

ほんとうは、患者さんに寄り添って、その人がどう生きたいか、そのためにはどんなお手伝いをしたらいいのか、そんな仕事がしたい。そう思っていたのに、目の前の仕事に追われ、考えることは、ただただ優先順位。そして、効率よく業務をこなすためにはどうしたらいいかということばかりでした。

病院の中にいると、決まりや人間関係やうじゃうじゃしたドロドロした感情に埋もれて、身動きが取れなくなってしまいました。

「組織で働きたくない」

一度病院をやめてみたわたしは思うのです。

でも。

それでも、今、仕事中に頭の中で聞こえてくることばがあるのです。

「自分たちの職場を作るのは、自分たちなのだ」

一万円選書に当選して慌てて読んだ本

2021年7月。

あるメールが届きました。

この度は「一万円選書」に、お申し込みいただき、誠にありがとうございます。

抽選(2020年受付、2021.7月分)の結果、お客様のお申し込みをお受けできることになりました。

そう、応募していた一万円選書の、当選メールが届いたのです。

「一万円選書」とは、北海道砂川市にあるいわた書店さんがされている選書サービスです。今は選書サービスも増えていますが、いわた書店さんが先駆けと思われます。

▶いわた書店さんのホームページはこちら

2018年4月に『プロフェッショナル仕事の流儀』を見てから、いつか選書してもらいたい・・・と録画した番組を何度も何度も見て、選書してもらえることを夢見ていたサービスです。

現在では、選書希望の応募が殺到するため、年に数日のみ応募期間があり、その後、毎月何名かずつ当選され、当選した場合のみ選書してもらうことができるのです。

一万円選書を知る1年前くらいに、ちょうどデイサービスではたらくことになり、たまたま福岡で手にとったのが「へろへろ」でした。

本が、その名の通り、へろへろ・・・Processed with VSCO with a6 preset

福岡の地行という場所あたりを舞台とした、特養やデイサービスを作っていく実録の本で、住んでいた場所が近かったこともあり「おもしろい!」と思いつつ、読み終わることができずにいた本でした。

それが、なんと一万円選書で、よく選書されているではありませんか。

一万円選書をあまりに夢見すぎて、ひたすら、どんな本が選書されているのか検索し、その中から気になる本やピンときた本を読む作戦に転じていたわたし。

「へろへろ」がよく選書されているのを知り、自分のセレクトに自信が出ていました。

が、読めていない現実。

そんな中、ついに、一万円選書に当選してしまったのです。

カルテと呼ばれるアンケートには、「心に残った本」を書く欄があります。さすがに、読んでもいないのに、「へろへろ」をリストに入れるわけにはいきません。

でも、職業や人生観などから、選書されるのは確実。

これは、選書リストが届く前に読んでおかねば!と必死になって読みました。(リストの中に既読本があれば変えてもらえるのです。)

わたしにはできない。でも、できる。やる。

病棟にいると必ずいる、「問題児」ならぬ「問題を多く抱えた患者さん」。

最初は、受け持ちに入っていると、めんどくさいなあとか大変だ、とか、さいあく!と思うのに、たいていそういう人は日に日に、病棟のアイドルになっています。

まさに、そういうおばあちゃんを救いたい、そんなところから物語は始まります。

きれいに整備された道路を歩いていくのは誰でもできます。この本に書かれているのは、轍さえもない田んぼのドロドロの道を、足を取られながらも歩いていく、そんな話です。

お金がなくてできないなら、そのお金を集めよう、とフリマを開催してお金を作ったり、ジャムを作ってそれを売って資金の一部にしたり。

みんながみんな、応援してくれるわけでもない中で、おばあちゃんのためを思って突き進んでいくその気概と、不器用ながらもみんなで一生懸命作っていく様子は、すごいと思う反面、今のわたしには、できない、という思いの方が強くなるのです。

でも、です。

根拠なんか別にない。ただ、やれると思う気持ちがあるだけだ。無謀と言われればそうかもしれない。無計画と言われればきっとそうだろう。でも、前例がないからとか、保証がないからとか、そういうことを頭に少しでも浮かべてしまったら新しいことは何ひとつ動き出そうとはしない。

新しいことはいつだって、無謀で無計画で、前例がなくて保証がないところからしか生まれてこないのだ。

「へろへろ」鹿子裕文

こんなこと言われたら、わくわくしちゃうし、どきどきする。

胸の高まりが抑えられなくなってしまう。

この本みたいに、自分のすべての時間を投げ売って捧げるみたいなことはできそうもない。だけど、それでもわたしにはやりたいことがある。

生まれ育ってはいないけど、この街で、お世話になったひとたちの、残りの人生がいい時間を過ごせるようなお手伝いがしたい、そう思うのです。

ならば。

自分たちの職場を作るのは、自分たちなのだ。

「へろへろ」鹿子裕文

たしかに、組織には人間関係のわずらわしさや、独特のルールがあって、動きにくいところもあります。でも、組織だからこそできることもあるんです。

だから、その強みを活かすために、働きやすいいい職場に変えていきたいと思うのです。やっかいな仕事をしているように思えるときでも、大変な思いをしているように思えるときでも、それはやっぱり、自分たちの職場を作るのは、自分たちだから、放棄しないで考えたい。

「へろへろ」から受け取った「強さ」

現実を変えていくには、それなりの力と強さが必要だと思うのです。

新しいことや今までしてきたことと違うことを始めようとすると、抵抗する力が必ず働くのだそう。でも、続けていけばそれは変えていくための力になりうる、そうかつて職場の先輩が研修での学びをシェアしてくださったことがありました。

自分にはできない、どうしようもない。

そんなふうに思えることも、最初の小さな一歩から、あるき続けていくしかないんです。

歯をくいしばらなくちゃいけないとき、座り込んでしまいたくなる足を、力を抜いてしまいたくなる握りしめた手を、そのまま握り続けていさせてくれる、そんな力を受け取りました。

変えていくには、頑張るときも必要です。

自分の人生を作るのは、自分なのです。

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