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大事なものが壊れて手放したのは、失うことへの恐怖だった。

「あ、割れた」

今日の天気でも言うかのように、あっけらかんとした口調で放たれたそのことばに、一瞬耳を疑いました。

「こっちだったら良かったのに。こっちが割れた」

シンクで洗い物をしている母が持ち上げたのは、わたしの大事な大事な大事な大事な、ミスチルのファンクラブに入って20年目の記念品である、マグカップでした。

その日は、親戚の子が七五三で、そのお参りの撮影を頼まれていました。少しでもいい写真を撮りたい、と、数字の3と7の形のバルーンを買っておいたので、それを膨らませている最中の出来事でした。

実家に戻ってきて早4年。

すでに2個のお気に入りのマグカップが家族などの、それはもちろん、悪気のないむしろ善意でしてくれた行為で割られてしまった。

ムーミンのビッグマグカップと、DEAN&DELUCAの黄色いマグカップ。

どちらも思い入れがあったしお気に入りで使っていたので、そのダメージは計り知れず、それでも、ショックを表に出しちゃいけないと歯を食いしばった結果、その様子が「トラウマレベル」と表現され、ミスチル好きの親戚に一緒に飲もうとマグカップを差し出して拒否されたという、いろんな意味で苦くて切ない思い出が残るできごととなったのです。

以来、基本的には大事なマグカップはじぶんで洗うようにはしていたのですが、七五三に間に合うように急いでいたこともあって、洗い物をお願いしてしまったのです。

撮影の間は、マグカップのことは忘れることができていたんですが、そのあとはどうしてもショックで悲しくて悲してくて、たまりませんでした。

もちろん、壊れたからといってさっさと捨てる気になんてなれず。

google先生に泣きついて、マグカップが割れた時にはどうしたらいいか聞いてみました。

ら、100円ショップでも買える「エポキシ接着剤」と言う、2種類の薬液を混ぜて使う接着剤が強力との情報をゲットして、早速購入してつけました。

google先生に教えてもらった通り、弁当におかずを詰めるときに使う銀紙みたいなやつの上で液体を混ぜ、割れた取手の部分をつけました。

数分程度持っていたら、手を離しても落ちることなくついていました。

しばらくはそのまま放置しました。

でも、マグカップを見るたびに、割れたことが悲しくて悲しくて、せっかくついたのに、マグカップが目に入ることが辛すぎて、いっそのこと割ってしまおうかとおもったくらいです。

こんなに断捨離してきたのに、こんなにものに執着してるんだろうか、と、それもなんだか悲しくなりました。

でも、ふと気づいたんです。

このマグカップをめったに使わないで置いておいたのは、大切なものを失う恐怖からだったんだ、ということに。

「壊れる恐怖(大切なものを失う恐怖)」が「使っているときの心地よさ」を上回っていたがために、あまり使わないようにしていたんですよね。

でも、わたしはどうしたい? と、じぶんに問いかけてみると、

使いたい。

って思ったんです。

そうだよなー。大事に使いたいから、ここぞって時に使ってたんだもんな。と。

くっつけたって、割れたところはやっぱり目立ってしまうけど、それでも大好きなものを使っていたい。

そのうち、「もういいかな」って時が来たら、手放したらいいかな。

見るのも辛くてしばらく部屋の戸棚の中にしまっておいたんですが、しっかり強力な接着剤でくっつけたので、もう一度息を吹き返してもらうことにしました。

やっぱりお気に入りは、じぶんが知っている。

ミスチルくんマグ、これからもよろしくね。

P.S. ミスチルくんマグが割られてしまったのをきっかけに、迷っていたミスチルパーカーを購入しました。結局ラッキーじゃん、てことになる、はず。そう、する。

どう動くかはじぶん次第、ですもんね。

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