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逆流していた経管栄養の高齢者

「もっと勉強しておけば良かった」

施設に来て、医療職がいないので、看護職にかかる医療的な部分での負担はとても大きい。

心筋梗塞とか、脳梗塞とか、命に関わる状態の時は、命を助けることが最優先で、そこが落ち着いたら病棟で様子を見ながらお家なのか施設なのかはわかりませんが、もといた場所で生活できるような関わりをしていきます。

認知症が進んでいったり、脳梗塞で呼吸はできるけど、ご飯が食べられるほどまでには回復しなかったひとには、鼻から胃にかけて管を入れたり、胃に直接穴を開けたりして胃に直接栄養を入れたりします。

もっと勉強しておけば良かった。

そう思うのは、栄養の分野に関してです。

目次

逆流をくりかえすおばあちゃん。

胃に穴をあけて、胃ろうを作っている腰が曲がっているおばあちゃん。

腰が曲がってしまうと、胃を圧迫するのもあるのですが、口から栄養をほんの少しですが吐き出すというか、流れ出ることが多くなった方がいました。

最初の頃は、加圧バッグというもので栄養を短時間で入れていた方なんですが、嘔吐をくりかえすようになり、栄養メニューを試行錯誤して、今では量が少なくて栄養が入るようなメニューに変えています。

ところが、その方、それでも栄養が口から流れ出るようになってきたんです。

口から栄養が流れ出る状態とは?

口から栄養が流れ出る状態とは、胃に入った栄養が逆流して口から溢れて出てきている状態です。

明らかな嘔吐もそうですが、口から甘い匂いがしたり、むせたりしているのもそれが疑わしい状態と言えます。

栄養が逆流してくるとどうなるでしょうか?

気管と食道は隣同士にあるんですが、飲み込むときに、気管への入り口に蓋がされて食べ物や飲み物が気管の方へ流れ込まないようになっています。

ですが、むせてしまう時は、この蓋がしっかり閉まらず気管の方へ食べ物が流れ込んで肺に入ってしまうんです。

そうすると誤嚥性肺炎という肺炎になってしまいます。

逆流している時にも、同じことが起こる可能性があるんです。

それで、いろいろと試行錯誤をしていました。

逆流する原因

胃の内容物が食堂に逆流する現象を、「胃食道逆流」と言います。

胃食道逆流の原因としては、

①下部食道括約筋(LES)の弛緩

下部食道括約筋の締め付けにより胃からの逆流を防いでいるのですが、この機能低下により胃の内容や消化液の逆流が起こりやすくなります。

②腹部膨満などによる胃内圧の上昇

胃の内容物が多かったり、胃内ガスの貯留などにより腹圧が上がることで逆流しやすくなります。

胃の内容物が逆流する時にできること

①30度以上のベッドアップ

まずは30度以上のベッドアップです。30度の角度を測ったことがあるんですが、しっかり上がっていないことの方が多いです。30度しっかり上がっているかを確認することが大切です。

②流動食の投与速度を落とす

     +

胃排出能を高める消化管運動賦活剤の投与(モサプリドクエン酸など)

③半固形食への切り替え

    +

脂肪含有量の少ない流動食への切り替え

*脂肪は下部食道括約筋の圧を低下させます。

逆流が落ちついた、その工夫は。

ただ、栄養のメニューを変えるということは、下痢や嘔吐のリスクが高くなるので、できれば最終手段にしたいところです。

それで、経管栄養投与中は右側臥位(右向き)で、栄養が終わったら左側臥位へ向きを変えるという方法を試していました。

ところが、それでも口元に栄養が流れていることが多くなりました。

そこで、経管栄養中も左側臥位にすることにしました。

これまでは経管栄養は右側臥位で、と言われていましたが、それは胃から先に流れやすくなるからだと言われていたからです。

ところが、胃食道逆流症ガイドラインでは、食後に右側臥位は望ましくないと記載されています。右側臥位でいることで逆流のリスクの方が高いと言われるようになっているんです。

栄養投与中の左側臥位については、確かなものは見つからなかったんですが、体位変換を頻繁にすることの嘔吐のリスクを考えると投与中から左側臥位にしておくのもひとつの工夫かもしれないと考え、左側臥位での栄養投与をしてみました。

すると、逆流して流れ出ていることがなくなったんです。

まだまだ、安心、とは言えませんが、ひとつの対処方法になったのかなと思っています。

施設では他の医療職や他の施設の医療職との雑談や情報交換が行いにくいので、こういう事例のような情報交換ができたらいいなとも思っています。

長年、常識とされていることは、数年後には逆になっていることもよくあります。

知識のアップデートをして、より良いケアにつなげていきたいです。

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